日産がアライアンス提携解除すると株価はどうなるの? 日産自動車の株価現状について解説。

日産自動車(以下日産)は、1933年設立の大手自動車メーカーで、電気自動車「リーフ」、小型車「マーチ」「ノート」、ミニバン「セレナ」、セダン「スカイライン」「シーマ」など多くの車種を投入し、米国・欧州・ロシア・中東・中国・韓国などで広く生産、販売されています。1999年にフランス自動車大手ルノーと資本・業務提携契約を結び、2016年5月に三菱自動車(以下三菱)の株式34%を取得し、資本・業務提携契約を締結している。

日産の会長を務めていたゴーン被告の逮捕、逃亡、ゴーン被告による経営の歪みによる売上減、さらに新型コロナウィルスの影響より、直近の株価が大きく下落しています。

今回は、ゴーン被告の事件の概要をはじめ、今後株価がどうなるのか検証してみます。

日産ゴーン事件

2018年11月19日、日産自動車の最高経営責任者(CEO)であり、ルノーの元取締役会長兼CEO、三菱自動車の会長でもあったカルロス・ゴーン被告が、金融商品取引法違反容疑で、代表取締役グレッグ・ケリーとともに逮捕されました。さらに、2019年1月には特別背任罪で追起訴されました。

〇ゴーン被告にかけられている容疑

  容疑 内容
2018年11月19日 金融商品取引法違反 ゴーン被告は自身の報酬額を有価証券報告書に、過少申告していた「有価証券報告書虚偽記載」容疑。過少申告の金額は億単位にのぼるといわれている。
2018年12月10日 金融商品取引法違反 ゴーン被告の勾留延長のため、直近3年間の役員報酬40億円の過少申告記載による有価証券報告書虚偽記載」による再逮捕→却下される
2018年12月21日 会社法違反
(特別背任罪)
ゴーン被告自身の資産運用会社が運用していたデリバティブ取引の契約を2008年から日産に移転させ、約18億5,000万円の評価損を日産自動車に負担させた。特別背任罪の公訴時効は7年だが、ゴーン被告が海外滞在期間が長いことから、時効は成立しないと特捜部は判断。
2019年1月11日 会社法違反
(特別背任罪)
上記デリバティブ取引による損失の信用保証に協力してもらったサウジアラビア人実業家に、日産の資金を不正に支出させた特別背任罪で追起訴される。
2019年4月4日 会社法違反
(特別背任罪)
最高経営責任者が使える日産の予備費を中東・オマーンの販売代理店に7年間約38億円が支払われていた。その資金の一部をゴーン被告が使用しているクルーザー購入費など私的利用されていた疑い

2018年11月に逮捕されてから、勾留→勾留延長と東京拘置所で勾留が続いていました。ゴーン被告の弁護人からの保釈請求は2回棄却されましたが、2019年2月28日3回目の保釈請求で、自宅に監視カメラの設置、インターネットの使用制限、パスポートは弁護士が保管等の条件で保釈金10億円のもと保釈されました。再度4月4日に再逮捕されたものの、再度保釈請求され、4月25日に保釈金5億円のもと保釈されました。

しかし、そのしばらく後の2019年12月31日にゴーン被告は「楽器ケース」に隠れて秘密裏に日本を出国しました。これで、ゴーン被告が出席する裁判が開けるかどうか難しくなりました。

日産現状の株価

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ゴーン被告の逮捕は、日産の会社へのブランド低下に加えて、日産が将来証券取引等監視委員会勧告に基づく金融庁への課徴金の支払いや刑事手続きで課される罰金などの支払い義務が発生します。ゴーン被告へ損害賠償請求を100億円求めているものの、回収できる見込みは低い可能性があります。

また、日産にとって最重要市場である2019年米国の販売台数が前年比9.9%減の134万台と、2年連続で前年割れとなっています。

これは、ゴーン元会長がリーマンショック後に米国市場を右肩上がりに成長させたツケが回ってきたといえます。

ゴーン元会長は、ディーラーが値引き販売する元とする「インセンティブ(販売報奨金)」を多額に使い販売台数を伸ばしてきました。インセンティブにより1台当たりの利益は減るものの、多くの台数を売ることで利益を稼いできました。さらに、「ステアステップ(階段)」式と呼ばれるインセンティブにすることにより、日産が出した目標台数に達成するとさらなるインセンティブが支払われ、さらに目標台数が引き上げられるという階段式に目標台数とインセンティブが上げられる仕組みとなっています。この仕組みは、売れないとインセンティブが減ってしまうため、ディーラーは期限前に無理な値引きをしてでも販売台数を増やすことが行われ、販売台数が減少してくると値引きしても売れなくなっていきました。

現在、無理な値引きの温床となったステアステップ式インセンティブは廃止されましたが、値引きできるインセンティブも減らされ、値引きができなくなり売れなくなりました。そして、依然として高いトヨタやホンダ並みの通常のインセンティブに戻しましたが、途端に販売台数が落ち、また元に戻し、利益率は少ないままとなっています。

かつトヨタに比べるとフルモデルチェンジやマイナーチェンジが少なく、モデルのサイクルが長く、新車を買いたくなるような魅力的な車を出せてないことも要因です。トヨタはフルモデルチェンジなどモデルのサイクル期間を短くして売上を伸ばしています。

ここにきて、新型コロナウィルスの影響で、日産の稼ぎ頭であった中国の2月製造業の購買担当者景気指数(PMI)は35.7とリーマンショックを下回り、日産も中国からの部品供給が不安定になり国内工場の生産量を減らしています。

このような動きから、2020年3月6日現在日産(7201)の株価は428円とリーマンショック時の安値300円割れまではいかないものの、その近辺の400円台まで下がっています。株価が非常に安い水準となっており、PBRは0.33倍とかなり割安な水準です。

PBRとは、株価÷1株純資産の何倍かを示します。純資産は会社が解散したら配分される資産のため、通常1倍程度が適切ですが、1倍割れということは株式を買って会社を解散させたら儲かってしまうことになります。この0.33倍の日産は買いなのでしょうか。

日産の今後の展望

〇配当金

2019年10~12月期決算発表では、販売減で11年ぶりの赤字に転落し、新型コロナウィルスによる影響も見込んでいない上の数字で業績悪化懸念がまだ拭えない状況となっています。そんな中、期末配当金が見送りとなり、配当金が支払われれば9%近くの利回りが見込めましたが、それもなくなってしまいました。2020年9月期に10円の配当を行う発表があり、予定通りなら2.67%程度の配当利回りの予定です。しかし、新型コロナウィルスの影響が今回の決算に見込まれていないことから、9月期も配当が見送られる可能性が0とはいえず、配当目当の購入は避けた方が良いでしょう。

一方、日産は自動車メーカーでは珍しく株主優待実施会社となっています。日産の車を買うと、5,000円相当のギフトカードと5,000円相当のカタログギフトが受け取れます。

〇ルノーとのアライアンスどうなるか

ルノーは、筆頭株主がフランス政府であるものの、ルノー自体も業績が厳しく、バランスシートを保護するために日産の株式売却を進めるかもしれません。

社長によれば、「ルノーとのアライアンスによるメリットが分からない」と述べていることから、ルノーの傘下を離れたからといって大きな損失が出るのではなく、あくまでも日産自体のインセンティブの削減、新車投入、固定費削減が成功するかどうかにかかっているものと考えます。

〇新社長

日産の内田誠社長は、「2020年度の業績を回復するのは難しい」と述べています。また、社長は、日産にとって米国を上回る市場である中国が、新型コロナウィルスによる影響がまだ見通せない状況ですが、中国の潜在需要は強く、中長期的には成長市場として見ているようです。なお、中期経営計画を5月に公表予定となっていますが、選択と集中で、固定費を削減するために工場閉鎖や保有資産売却を考えるとのことです。

ルノーと三菱自動車とのアライアンスについても、この中期経営計画で公表する予定です。

まだ、人員削減、資産売却など固定費削減が今後見込まれます。株価もリーマンショック後近辺の安値で推移されていることから、これらの影響をすでに加味し始めているようです。市場が予想する以上の悪い決算や固定削減に伴う費用が出てくればさらに下がる可能性はあるものの、300円台やPBRが0.3倍のところでは買えば大きな値上がり益が見込めるでしょう。

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